できるリーダーは、「これ」しかやらない
この質問に自信を持ってイエスと解答できるリーダーは少ないことでしょう。かくいうヤマシタ自身も中間管理職ではあるのですが、この質問が本書の冒頭に出てきたときドキッとしました。
マネージャーの仕事は?と聞かれたときに、様々な解答が存在すると思いますが、多くの現場で働いているマネージャー陣の解答としては、
「今あるリソースを使って、なんとかして最大限の成果を出すこと」
こうした解答が一般的かと思います。
もちろん、この内容そのものが間違っていることはないのですが、こうした働きかけの中でも、多くのマネージャーやリーダーが孤独を感じ、自らの価値発揮を最大限にできていないという悩みを抱えているのです。
本書はこうした数多くのリーダーの悩みに答えてくれます。"できるリーダー"が心がけている視点、実践的な行動についてまとめられた一冊です。多くのリーダーに手にとっていただきたいと思います。
本書をおススメする人
- リーダーになったばかりの人
- 中間管理職として孤独を感じている人
- プレイングマネージャー
- プレイヤー時代よりも成果を出せていないと感じる人
マネジメント層が読んで「実践」できる仕上がりの一冊です。リーダーシップをいまひとつ発揮できていないなど、多くのリーダーは孤独に苛まれながら日々を過ごしています。そんな多くのリーダーに向けた本著は、そんな悩みに対しての答えをくれる本です。「マネージャー」「●●長」「管理職」こうしたキーワードに該当する多くのリーダーにオススメします。
著者:伊庭正康氏
"一般論ではなく、実践的でスグに使える"、"学ぶだけでなく、明日からの元気が出る"ことをモットーにした研修のリピート率は95%。
1969年京都生まれ。1991年リクルートグループ入社(求人情報事業)。営業職としては致命的な人見知りを4万件を超える訪問活動を通して克服。
その後は、リクルート社においてプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞、また40回以上の社内表彰を受け、営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。リクルート流の「圧倒的な当事者意識」を持つ組織作り、営業マン育成法を会得。
2011年、研修会社(株)らしさラボを設立。リクルートで学んだ「圧倒的な当事者意識」を持つこと、「期待に応えるだけではなく、期待を超える」ことの大切さを説くべく、リーディングカンパニーを中心に年間200回を超えるセッション(営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演)を行っている。
リクルートにて圧倒的成果を残されていた人。営業職としての成果を数多く残され、そのノウハウを現在の研修に生かされています。
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「方針」をリーダーが決め、「方法」はメンバーが考える
やるべきこと(方針)はトップダウンで決め、
やり方(方法)はボトムアップで任せる。
リーダーがやるべきことは、「決めること」です。みんなで決めることを重視するリーダーもいたりしますが、最終的に決めたその責任は誰が取るのでしょうか。部下たちは、任された仕事の責任までも任されてしまったら萎縮してしまいます。生き生きと活躍する姿はなかなか見いだすことができないでしょう。
あくまでもリーダーとして、やるべきことを明確にして、そのやるべきことを達成するための方法論については、部下に任せていくという手法が重要。やるべきこととやり方の関係性を、トップダウンボトムアップの関係性で整理しておくことで、コミュニケーションが取りやすくなります。
「任せる」と「放任」の違い
【放任ではなく、「任せている」の基準】
- 今、部下がやっている作業を具体的に言えること(その時点で)
- 今、部下が抱えている負の感情(不安、不便、不満)を把握していること
- やったことに対してフィードバックを行うこと(感謝する)
方針を示して、やり方を部下に任せるといっても、放置してはいけません。実際に何をやっているかを適切に上司は把握している必要が洗います。
理由は、任された部下たちは、チャレンジはしていながらも、多くの不安を抱えています。その不安を上司が認識した上で、それらの感情に寄り添うことが重要です。これで良かったのかどうか、正しかったのか、といったことも気にしています。
多くの日本企業においては、優れたプレイヤーであった人がリーダーに抜擢されるケースがほとんどかと思います。 優れたプレイヤーは、自分たちの成功体験を基に捉えているので、 「これぐらいできるだろう」という感覚を持つことが多いと思います。しかし、多くの不安、負の感情を無視しながらリーダーシップを発揮することはできません。
適切な距離か編んで部下に"寄り添う"ということがリーダーには求められるのです。
多様性を認める
「頑張るのが当たり前」
「成長するのが当たり前」
「トップセールスになりたい」
プレイヤーとして活躍してきた多くのリーダーはこうした価値観を当然心に宿していると思います。この価値観を部下にも当然のように求めることは、令和時代のビジネスマンしてはナンセンスです。
現代は価値観も働き方さえも多様性の時代です。その会社での成長を強く求めている人ばかりではありません。もしかしたら副業の方が本腰を入れている部下もいるかもしれません。
その現状をしっかりと受け止めて、認めること。それを抜きにして部下との適切なコミュニケーションは図れません。「自分の考え方とは違うんだ」という前提を持って部下と対峙すること。
「特にやりたいことはない」という部下へのアプローチ
部下に「やりたいことはある?と聞くのは、少し乱暴。
たいてい「わからない」と返ってくるだろう。
リーダー自身もやりたいことが明確にない人もいる中で、「やりたいことがある」と答える部下はほとんどいません。こういう場合は単に部下の中で、整理ができていないだけの可能性が高いです。ここでよく使われるのが「Wii-Can-Must」の方程式です。
参照)【自己分析のフレームワーク】自分は何がしたいのか?
Willとは、本人の「欲求(動因)」。どうなりたいのか、どうありたいのかといった欲求。
Canは、本人の「能力」。自分ならできるという確信、強みを活かせる期待。
Mustとは、本人が従事する「仕事(業務)」のこと。
こうしたフレームワークを使って部下とコミュニケーションを取っていくことで、「部下のやりたいこと」をあぶり出していくことができます。
現時点で、自分のやりたいことを言語化している人の方が少ないです、。少なくともヤマシタの周りの20代の部下は、明確には言語化できていない人が多いです。
本人のやりたいことと、従事している仕事とのリンク付けがうまくいけば、やりがいを持って仕事に臨んでくれることでしょう。
行動を変えたいなら、「評価指標」を変える
多くの会社員は、驚くほど「評価指標」に合わせる。評価に反映されないと、いくら言っても徹底は不十分になるが、評価を変えれば3ヶ月で行動は変わる。
サラリーマンとしての働き方を続ける人は、必ず「人事評価」が付きまといます。リーダーであれば、部下の評価を決める立場にある人も多いことでしょう。
「評価=会社から期待されていること」
という方程式がどの会社においても同様に展開されているのが会社員の仕組みです。それであれば、期待する動きと評価指標を連動させることで部下の行動を変えることが可能です。
逆に、評価されないことを「頑張れ」ということの方が無理があるということです。人事評価上の制度を変えることが難しかったとしても、どういう行動を自分が評価するのか、それを明確にし部下に適切な形で伝えることで、チームとしての動き方を変革させることはリーダーとして可能な範囲だと思います。
チームの中でMVPを選出したり、自分の決裁の範囲で特別な賞与を与えることなども検討してもいいでしょう。
行動を変えたいならば、評価指標を変える。評価指標に連動して部下の行動は変わる。
このマインドをリーダーは肝に命じておく必要があります。
プレイヤー上がりのリーダーが失敗する、最大の理由
これは簡単ですよ。自分のやり方を押し付けないこと。
プレイヤー上がりでリーダーになる人が失敗するのは、これが理由なんです。
できるリーダーは、メンバーにやり方を考えさせる。
ダメなリーダーは、自分のやり方を押しつける。
圧倒的な成果を残してきたプレイヤー上がりのリーダーは、自分のやり方に自信を持っています。もちろん、そのやり方そのものを否定するつもりはありません。それでも同じ業態で働いている部下の成果を残すことは可能なはずです。
しかし、それ以上の方法は存在しないのでしょうか?部下の突拍子も無い視点や提案から、新たな営業手法が見つかり、それが自分のやり方よりも優れていた場合、それを歓迎してあげられるかどうか。
一緒になってその手法を考えてあげられる寄り添う気持ちがいかに重要かということがよくわかります。
できるリーダーは、「これ」しかやらない:まとめ
本記事の中では、本著のメソッドの一端を紹介しました。これ以外にも体系的にリーダーシップを発揮するために必要なマインド、メソッドが満載の一冊です。リーダーになっている人は、そもそも会社から評価されており、有用な人材であると認識されているはずです。そんな人たちの価値をさらに発揮するためには、部下と一緒になってチームをドライブさせていかなければなりません。
その最中では孤独も感じますし、プレイヤーとしてうまくやってきたのにうまくいかなかったりといった葛藤があります。こうした葛藤に向き合い、その答えを教えてくれる本が、まさにこの「できるリーダーは、「これ」しかやらない」です。多くのビジネスマンが早くから本著に触れ、学びを得ることで、機会損失を少なく、社会に価値発揮していくことができることでしょう。