チームの法則とは
タイトルにある通り、本書は「チーム」についてまとめられた一冊となっています。チームと呼ばれるものは、何も会社だけにとどまらず、学校や部活動、バイト先などあらゆる場面で存在する概念であり、そこからあらゆる人に読んでいただきたい一冊であると感じました。
本書はチームを「精神論」や「経験則」ではなく、理論的かつ体系的な「法則」で科学的に解き明かしていきます。
チーム作りという領域は、どうしても感情論が先行しがちです。良いチーム作りができているチームは、優れたリーダーがいることから生まれるものだと考えられていますが、本著ではそこに真っ向から反論しています。
偉大なチームに必要なのは「リーダー」ではなく「法則」だ
チーム・組織論やモチベーションにまつわる背景等も含めて、一つの方程式を当てはめるような形で分析がされており、非常にすんなりと頭に入ってくる内容となっています。
THE TEAM 5つの法則 著者:麻野 耕司氏
麻野 耕司
モチベーションエンジニア。株式会社リンクアンドモチベーション取締役。株式会社ヴォーカーズ取締役副社長。1979年兵庫県生まれ。2003年慶應義塾大学法学部卒業。同年株式会社リンクアンドモチベーション入社。2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に当時最年少で着任。気鋭のコンサルタントとして、名だたる成長企業の組織変革を手掛ける。2013年、成長ベンチャー企業向け投資事業立ち上げ。全く新しい投資スタイルで複数の投資先を上場に導く。2016年国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」立ち上げ。国内HRTechの牽引役として注目を集める。2018年同社取締役に着任。同年株式会社ヴォーカーズ取締役副社長を兼任。国内最大級の社員クチコミサイト「Vorkers」を展開
モチベーションエンジニアリング という概念を中心としたビジネスを手がけるリンクアンドモチベーションの取締役でもある麻野耕司氏の書かれた著書。同社の主力プロダクトであるモチベーションクラウドの立ち上げから関わり、広く人間のモチベーション領域に知見が広い人物です。
THE TEAM 5つの法則:概要
本書を要約すると以下の内容に集約されます。
- A:Aim(目標設定)の法則
- B:Boarding(人員選定)の法則
- C:Communication(意思疎通)の法則
- D:Decision(意思決定)の法則
- E:Engagement(共感創造)の法則
チームの法則には上記の5つの法則が存在するといいます。本著ではこれら5つの法則を4つのステップで説明しています。
- M:Method(法則)
- E:Episode(具体的事例)
- A:Action(チェックリスト)
- T:Theory(学術的背景)
法則のみならず、それらにまつわる具体的事例や学術的な裏付けが説明されているので、非常に納得感のある説明・紹介となっています。
実際に自分のチームで実践ができるレベルにまで転換できるよう、事例も非常に具体的であるため、あなたが今おかれているチーム立場によって実践することができることでしょう。
THE TEAM 5つの法則:目次
- はじめに 売上、時価総額を10倍にした「チームの法則」
- チームを科学する
- 誰もがチームを誤解している
- この国に必要なのは、チームという武器
- チームの法則がもたらせた奇跡 他
- 第1章 Aim(目標設定)の法則〜目指す旗を立てろ! 〜
- 「共通の目的がない集団」は「チーム」ではなく「グループ」
- 「目標を確実に達成するのが良いチームだ」 という誤解
- 意義目標がなければ作業と数字の奴隷になる 他
- 第2章 Boarding(人員選定)の法則〜 戦える仲間を選べ〜
- チームで最も大切なメンバー選びとメンバー変え
- チームは必ず4つのタイプに当てはまる
- 人が入れ替わるチームは本当に駄目なのか?
- チームには多様性が必要だという誤解
- 「ゴットファーザー」より「オーシャンズ11」型のチームが強い 他
- 第3章 Communication(意思疎通)の法則〜最高の空間をつくれ〜
- 実はチームのコミュニケーションは少ない方がいい
- ルール設定の4つのポイント
- コミュニケーションを阻むのはいつだって感情
- 「理解してから理解される」 という人間関係の真実
- 「どうせ・しょせん・やっぱり」がアイデアを殺す
- 己をさらして心理的安全をつくり出す 他
- 第4章 Decision(意思決定)の法則〜進むべき道を示せ〜
- 誰も教えてくれない意思決定の正しい方法
- 「独裁」vs「多数決」vs「合議」
- 「正しい独裁」はチームを幸せにする
- 独裁者が持つべき「影響力の源泉」
- 第5章 Engagement(共感創造)の法則 〜力を出しきれ〜
- 超一流でもモチベーションに左右される
- モチベーションを科学する〜気合いで人は動かない〜
- チームのどこに共感させるか
- エンゲージメントを生み出す方程式
- [特別収録]チームの落とし穴~あなたのチームは足し算か、掛け算か、割り算か?~
- [最終章]私たちの運命を変えた「チームの法則」
第1章 Aim(目標設定)の法則 [目指す旗を立てろ!]
あなたが『THE TEAM』の制作チームの一員なら、どの目標設定が良いと思いますか?
A 「チームの法則」を、事例を交えて分かりやすく伝える本をつくる
B 10万部売る
C 日本全体のチーム力を高める
これだけを読むと、どれが正解なのか、ということを考えてしまいますが、ここでいいたいことは、これら3つのタイプの目標設定には一概にこれが良い、悪いとは言えないことにあります。
意義目標、成果目標、行動目標とそれぞれ目標ごとにアクションのわかりやすさや、ブレイクスルーの起きやすさが違います。おかれているチームによって当然求められている領域も変わるため、適切な目標設定をしなければパフォーマンスを発揮することはできません。
目標を達成することも当然重要なことではありますが、それ以上に、【どういった目標設定をするか】といった視点を持つ必要があります。
加えて重要なことは、 きちんと【チーム活動の意義】が設定されていること。
チームの取り組みにおける意義目標が設定されていなければ、メンバーは作業と数字の奴隷となってしまいます。そこからはブレイクスルーを生み出すことは困難です。
現代のビジネスシーンにおいては圧倒的なスピード感を持ってブレイクスルーが求められており、チームに対して期待されている領域もここにあります。
チームとして成果を残し、ブレイクスルーを生み出すための目標設定を適切に行うこと、まずそこに最も注力すべきなのです。
第2章 Boarding(人員選定)の法則 [戦える仲間を選べ]
「チームには絶対解がある」ではなく、「チームには最適解がある」
チームには多様性が必要か。
よく論じられる領域ではありますが、多様性のあるチームが必ずしも最適なのか、といわれれば、ケースバイケースです。
今おかれているチームが、どういった性格を持ったチームなのか、サッカー型か柔道型かなどを見極めていくことで、より最適なチーム構成に調整をしていくことが可能です。
業務内容や、チームに求められている内容によっても、適切なメンバー構成というものは変わります。皆均質のと特性を持ったメンバーで構成されたチームが力を発揮することもあれば、オーシャンズ11のようにメンバーごとに全く異なった個性を持ったチームが力を発揮することもあるのです。
自分が置かれているチームがどういった役割期待をされているかといった視点からメンバー構成を考えていく必要があるのです。
第3章 Communication(意思疎通)の法則 [最高の空間をつくれ]
業務遂行のために必要なこととして、「ルールを決めること」があります。このルールの決め方において「どこまでルール化するか」というのは、どんなリーダー・チームにおいても悩ましい領域であることでしょう。
本著では、そんなルールの作り方においても、チームの特性を踏まえながら最適解を提示してくれます。
ある程度まではルールを設定し、ある程度以上はコミュニケーションで担保する、というのがチームにおけるメンバー同士の効果的・効率的な連携におけるポイントです。
第2章で紹介されたチームごとに、ルール設定のレベル感が説明されており、
【チームは置かれている状況によってどんな方針で運営すべきかは変わる】
ということが重ねて説明されています。
チームに絶対解はないが、最適解があると言うことがここでも強調して説明されています。
第4章 Decision(意思決定)の法則 [進むべき道を示せ]
この章では、チームにおける「意思決定」のあり方について説明されています。
「独裁」vs「多数決」vs「合議」 という意思決定プロセスの3種類のパターンにおいて、
それぞれのメリット・デメリットを説明した上で、様々なケーススタディが展開されます。
特に、「独裁」については、言葉の響きは非常にネガティブなイメージが先行しがちですが、
「 正しい独裁」はチームを幸せにする
と書かれているようにチームによっては独裁における意思決定が有効なこともあります。
昨今のビジネスシーンにおいては、意思決定スピードがビジネスの成否を分けることもあるぐほど環境変化のスピードが速くなっています。そんな環境下では、合議や多数決といった意思決定プロセスを経ていては、ビジネスを加速させることはできません。
ユニクロの柳井さんやソフトバンクの孫さんなど、圧倒的なカリスマ性をもってチームを「独裁」の中で引っ張って成功しているケースなどは、まさしく「正しい独裁」の一つと言えるでしょう。
第5章 Engagement(共感創造)の法則 [力を出しきれ]
モチベーションを科学する。本章では人間がいかにモチベーションに左右され行動しているかが科学的に解説されます。モチベーションという言葉を聞くと嫌悪感を抱くビジネスマンも多くいると思いますが、結論づけられているのは「気合いで人は動かない」ということ。モチベーションが下がっている人に対して「気合や根性が足りん」とゲキを飛ばすことは全く無意味であることが書かれています。
ここでは、<エンゲージメント(共感創造)の4P>という形で、魅力を高めていく必要性が説かれます。
- Philosophy:理念・方針
- Profession:活動・成長
- People:人材・風土
- Privilege:待遇・特権
これらのどれに共感させるかによって、そのチームの特性は変わってきます。マッキンゼーではProfessionへの共感が強くあり、リクルートではPeopleへの共感が強くある、といった具合です。どちらも素晴らしい会社ですが、チームとしての特性は違い、それぞれにモチベートされた人材が活躍しているのです。
もちろん、どのPもある程度の魅力は必要で、その魅力が20や30だと、いかに自分が大切だと思っているPの魅力が高くても、エンゲージメントは高まりません。
しかし、チームとしてどのPでメンバーのエンゲージメントを高め、束ねていくかを戦略的に定め、チーム作りに取り組んでいくことは有効です。もしもあなたのチームが「何に共感して、メンバーたちはチームで活動しているのか?」が不明確なのであれば、エンゲージメントを高める軸を明確にして下さい。
THE TEAM 5つの法則:まとめ
チーム作りには法則がある。この言葉を説得力を持って説明されているのが本著「THE TEAM 5つの法則」です。優れたリーダーがいることが絶対解でもなく、偉大なチームには法則が必要であることが、5つの法則を持って説明されています。
企業の人事部の人以外にも、現場で働く中間管理職やマネージャー、部活動やアルバイトに従事している大学生にとっても有用なメソッドであり、多くの方に手に取っていただきたい一冊です。