『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ(北野 唯我)』の感想・レビュー【書評】
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「天才を殺す凡人」

世の中の天才を殺すのは圧倒的な数の凡人である

リンク凡人が、天才を殺すことがある理由。ーどう社会から「天才」を守るか?

こちらのエントリーは公開後瞬く間に反響を呼び、30万PVを叩き出すセンセーショナルな記事となりました。本著はその記事の内容を、ストーリー仕立てで解説した1冊となります。

本著に登場するのは、凡人の青野と、その会社の社長上納アンナ、すべてを理解する超人(犬)のケンなど、それぞれがそれぞれの役割を分かり易くするために、「現代社会においてよくある会社のシーン」を切り取ったストーリーが展開されます。

会社の中で、自分が良いと思っているものをなかなか通すことができない、理解されない、といったケースに遭遇することは多々あります。なぜそうしたことが起こるのか、なぜこの人は理解してくれないのか、そんな思いを解消してくれるのが本著「天才を殺す凡人」です。

「天才を殺す凡人」著者:北野唯我

 

北野唯我
兵庫県出身。新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局で中期経営計画の策定、MA、組織改編、子会社の統廃合業務を担当し、米国留学。帰国後、ボストンコンサルティンググループに転職し、2016年ワンキャリアに参画、執行役員。2019年1月から子会社の代表取締役、ヴォーカーズの戦略担当ディレクターも兼務。30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が14万部。2作目『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)が発売3ヶ月で9万部。編著に『トップ企業の人材育成力』。1987年生。

博報堂で経営企画などを担当されたのち、BCG、ワンキャリアでの執行役員と華々しい経歴をお持ちの若手実業家。30歳の時に著書「転職の思考法」がヒットし、本著「天才を殺す凡人」が2作目の著書となります。

「天才」「秀才」「凡人」をカテゴライズするための本ではない

本著では、人の才能は大きく3つに分けられ、「天才」「秀才」「凡人」とカテゴライズされています。

  • 天才:独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人
  • 秀才:論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人
  • 凡人:感情やその場の空気を敏感にヨミ、相手の反応を予測しながら動ける人

インパクトのあるタイトルや、凡人という言葉のマイナスイメージなどから、多くの人は、それぞれのカテゴリーのどこに自分が当てはまるかを考えることでしょう。

しかし、本著ではそのカテゴライズをしたいという意図は読み解けません。むしろ、適切に読み解いていくことで、誰しもに「天才」「秀才」「凡人」の才能を必ず持ち合わせており、それぞれの割合が違うだけであることがわかります。天才:秀才:凡人=10:0:0 という人はいないのです。

そして、それぞれの才能にもポジティブな側面・ネガティブな側面が存在します。言葉の意味以上に、それぞれの才能に優劣はないものです。天才だからよい、凡人だからダメといったことではなく、全員がそれぞれに才能を持ち合わせており、その才能を発揮できていないことに対して悩むことはもったいないということが書かれています。

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職場の人間関係に悩む、すべての人へ

副題の「職場の人間関係に悩む、すべての人へ」という言葉は、この3つの才能をそれぞれ持っている人同士の「コミュニケーションの断絶」に対して起こる不具合を指していると考えられます。

  • なぜあの人は自分の話を理解してくれないのだろう
  • なぜこの提案を採用してくれないのだろう
  • なぜあの人みたいに自分はうまく仕事ができないのだろう

これらの悩みの根源には3つの才能における評価軸の違いがあります。

  • 天才:創造性
  • 秀才:再現性(≒論理性)
  • 凡人:共感性

本来はこれらの軸に優劣はありません。

しかし、圧倒的な人数の差があり、凡人>>>>>天才 といった人数構成になっているのが現代社会です。そこで日常的に行われている「多数決」は「天才を殺すナイフ」になりえるのです。そして、大企業でイノーベーションが起きない理由はまさにここにあるのです。

創造性を測るための指標は「社会からの反発の量」

創造性は、”間接的”には観測することができる。それが凡人の「反発の量」である

再現性や共感性といった評価軸は、事業KPIや財務KPIといった指標で測ることができます。

しかし、創造性だけは価値を図るための指標としての適切なKPIが存在しません。創造性というものは、既存のフレームでは測りえないものだからです。

そして、創造性を図るための指標として本著で上げられているものとしては、「反発の量(と強さ)」をKPIに置くべきだとされています。世の中から大きな反発を呼ぶものほど、イノベーションを起こしやすいということです。

ただ、大企業は多くの凡人から構成されている組織です。その凡人からの反発の量をKPIとすることは、倒産のリスクを高めることになります。多くの凡人から反対されることによって、その創造性はつぶされてしまう、これが、大企業でイノベーションが起きない理由なのです。

「天才を殺す凡人」まとめ:自分の中の天才を生かそう

起業がイノベーションを起こすため、という観点以外においても、本著では、職場のコミュニケーションに悩む人に向けた示唆を数多く示してくれています。天才は孤独である、ということを理論立てて開設されたストーリーは非常に分かり易く、また、誰しもの中に天才としての才能を持ち合わせていることが書かれており、その才能を開花させることなく、凡人の才能が天才の才能を殺す、ということが描かれます。

我々は、現代社会の中で生きるうえで、様々な気持ちを押し殺しながら生きています。そんな不都合をどうとらえていくべきか、それはこの本を読んだあなた自身が決めることであり、そのための判断軸を呉れる素晴らしい一冊であったと感じます。まさに「職場の人間関係に悩むすべての人へ」この本は読まれるべき一冊となっています。

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