【書評】『刑事弁護人(亀石倫子)』の感想 国家権力と戦う弁護士のノンフィクションストーリー
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刑事弁護人(亀石倫子)の感想

「権力の暴走を許してはいけない」

すべてが実話。迫力と感動の法廷ドキュメント

罪を犯したかもしれない人物の車に警察が勝手にGPSを取り付け、徹底的に行動を把握する行為を繰り返していた――。令状なき捜査は許されるのか。警察が、一般市民の行動確認を行う危険性はないのか。

2017年に「令状なきGPS捜査は違法」の最高際判決を日本で初めて勝ち取った弁護団。その弁護団を率いた女性弁護士の奮闘とチームの苦悩・活躍を描く。

出典:amazon 刑事弁護人 (講談社現代新書)

とある知り合いのツテから紹介された本著は、現役の女性弁護士である亀石倫子さんの著書。彼女は、警察による令状がないGPS捜査は違法、という最高裁の判決を勝ち取った弁護士です。

この判決がいかに画期的なものであったか、といった事すら分からず読み進めていましたが、非常に痛快なストーリーと語り口調で、まるで小説を読んでいるような感覚。しかしすべてが実話、ノンフィクションで語られているということから、まさしく「事実は小説より奇なり」ということが本著には描かれています。

強大な権力の前に立ち向かう弁護士としての活躍の一端を垣間見ることができる一冊です。

著者:亀石倫子さん

刑事事件取扱い件数は200件以上

大阪市立大学法科大学院を卒業後、刑事事件専門の法律事務所である弁護士法人大阪パブリック法律事務所に入所。6年間の在籍期間に担当した刑事事件は、200件以上にのぼる。特に、病的窃盗癖(クレプトマニア)や性犯罪の弁護経験が豊富であるほか裁判員裁判の対象となる重大事件も20件以上担当している。

2016年1月、法律事務所エクラうめだを開設。

これまで培ってきた刑事弁護の経験とノウハウを生かしつつ、女性弁護士ならではの視点ときめ細かさを活かし、離婚や男女トラブルも数多く手掛ける。

出典:法律事務所エクラうめだ

刑事事件専門の法律事務所に所属されたのちに独立。その美貌からも「美人弁護士」として取り上げられることも多く、TVや講演などにも数多く登壇されています。

そんな亀石倫子さんが、大阪パブリック法律事務所にいたころに受け持った事件が、今回のGPS捜査事件であり、本著はその軌跡をノンフィクションで描いたものとなっています。

法律知識が無くても楽しめるストーリー

描かれているGPS捜査事件とは、窃盗で捕まった男性が留置場でこぼした、「警察がGPSを取り付けた」「令状もなく警察は、そんなことまでやっていいのか」といった言葉に端を欲する刑事事件。GPSを令状なしに取り付けることは違法であること、加えて、プライバシー侵害として憲法違反にもあたるのではないか、が争われました。

窃盗で捕まった男性は、犯罪の容疑を認めており、しかるべき処分を受ける覚悟でした。しかし、男性は

こんな違法捜査を警察がやっていいのかどうか、ハッキリしてほしいんですよね

と、GPSを使った捜査手法が適法だったのか、という点をはっきりしたいということで、最高裁まで争うことになりました。

結果的に最高裁は、GPS捜査がプライバシー侵害となる点を認め、またGPS捜査には、新たな立法的な措置が必要であるという判断を下します。これは、GPS弁護団が求めていた最高の結果となりました。

ヤマシタは法学部でもなければ、法律関係に明るいわけでもありませんが、小説風に書かれたストーリーの輪郭や、登場人物の会話が、それぞれのキャラクターや心理描写を描いており、事件の経緯や、実際の弁護士としての仕事内容に至るまで、詳細がわかる内容になっています。弁護士が書いた、という印象を捨て、小説などになれた読者にとっても非常に読みやすい一冊に仕上がっていると思います。

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「チーム力」が大きな力に対抗する手段となりうる

本著では、「弁護団」というチームとしての弁護士の活躍が描かれています。刑事事件においては、相手は検察であり、警察という巨大な組織が立ちはだかります。国家権力に立ち向かうためには、一人の弁護士だけで取り組むには困難であり、若いながらも同期の絆から様々な困難に立ち向かう姿が描かれます。

ビジネスマンにとっても重要である「チーム力」というのが、弁護士という職業においても同様に、大きな力を生み出すことが描かれています。それぞれに特徴があり、得意不得意があって、っキャラクターも違う、そうした6人が絡み合って今回の歴史的な判決を取ることに成功したのだと考えられます。

刑事弁護人(亀石倫子) まとめ

本著は、ノンフィクションでありながらも、痛快な語り口と登場人物のキャラクターから、小説を読んでいるような感覚になる一冊です。刑事事件という一見ネガティブに思われがちな内容が書かれていながらも、それに向かって「刑事弁護人は、なぜ犯罪者を守るのか」「どうして刑事弁護人は、悪いことをしたヤツらの弁護ができるのか」といった、一般の感覚でよく言われるであろう疑問にも回答してくれています。

罪を犯したと疑われている人の権利を守ることは、自分を守ることでもある。

亀石倫子さんの考え方に最も近い一文です。この社会で生きていく中で、絶対に罪を犯さないという保証もなければ、被疑者・被告人も慈雲の世界と同じ人間であることを考えれば、傍観者ではいられないと亀石倫子さんは語ります。

刑事弁護人とは、どういう仕事をしているのか、どんな考え方を持っているのかといった弁護士にまつわる話から、国家権力に立ち向かう正義を貫く弁護士のストーリーが描かれる一冊、多くのビジネスマンにもオススメです。

 

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