「破天荒フェニックス」は500ページの大作ながら一瞬で読める面白さ
「破天荒フェニックス」とは、メガネチェーン「オンデーズ(OWNDAYS)」の社長「田中修治」さんが著者の、企業再生物語小説。小説といいながらも、実在する人物や企業の名前が出ており、オンデーズの歴史とも重なるストーリーでリアル感が違います。普段は、ほとんど小説を読まないヤマシタも、話題性と、編集者箕輪厚介の名前につられてAmazonをポチっておりました。
普段読んでいるビジネス書よりも多少ボリューミーな500ページの作品でしたが、一気読みできるほど疾走感のあるストーリーに仕上がっており、これが小説?と思えるほどのリアル感。
あとがきにはこう書いてあります。
本著『破天荒フェニックス』は、僕たちオンデーズが歩んできた、そんな10年間のうちの7年間を切り取り、起こった事実をもとにしながらも、一つのフィクション、パラレルワールドの物語として勝手気ままに書き連ねたものです。
本著を読み終わって真っ先に浮かんだのは、「事実は小説より奇なり」。事実ベースで書かれたフィクションでありながら、波乱万丈な企業経営ストーリーがこの本には描かれています。
「破天荒フェニックス」は経営者をはじめ全てのビジネスマンにオススメ
「破天荒フェニックス」は、ドラマ「半沢直樹」「ハゲタカ」「LEADERS リーダーズ」など、多くのビジネスマンの共感を呼んだ作品に通じるような、ビジネスの現場における、障壁や葛藤が描かれています。経営者をはじめ、多くのビジネスマンが胸を熱くしながら、日々の仕事を振り返ることができるエピソードが満載です。
とにかく田中修治社長は破天荒。どこまでもリスクをとりながら、前に前に突き進むという姿に感銘を受けます。
単なるビジネス小説ではなく、事実に沿った内容になっていることから、多くのビジネスマンの現場での仕事において参考になる描写がたくさん描かれています。
「破天荒フェニックス」著者:田中修治さんとは
10代の頃から起業家として、企業再生案件を中心に事業を拡大。
2008年に巨額の債務超過に陥り破綻していたメガネの製造販売を手がけるメガネ販売店チェーンの株式会社オンデーズに対して個人で52%の第三者割当増資引き受け、同社の筆頭株主となり、同時に代表取締役社長に就任。
2013年には同社の海外進出を手がけ、オンデーズシンガポール法人(OWNDAYS SINGAPORE PTE LTD.)を設立。同社取締役就任。
2014年 オンデーズ台湾法人(恩戴適股份有限公司)を設立し、同社代表取締役社長に就任。
2015年 外国人専門の人材紹介会社「ダイバージェント株式会社」設立。同社代表取締役社長就任。
2016年 外国人専門の求人サイト「ダイバージェント」の開発・運営を開始。
2017年1月末現在、アイウェアブランド「OWNDAYS」を10か国220店舗展開し、独自の経営手法により、事業拡大と成長を続け実業家として活躍している。【従業員数1900名 / 売上高150億(2016年)】
2017年4月 ビジネス利用に特価した民泊プラットフォームTRIP BIZの開発・運営を開始。
引用:Wikipedia
10代から起業家とは、相当なヤリ手なのだろうと予測しながら、本著を読むまでは人物像も全く知らない方でした。
そして本著を読み終わって、やはり「破天荒」であることが証明されました。笑
そんな破天荒な社長の下で社員は振り回されながらも、大好きなオンデーズのために奮闘しているという描写が印象的です。どこまでも社員を大切にし、リストラや減給といった社員に対しての待遇面は死守しながら、資金ショートに陥る危機を何度も乗り越えています。
小説という物語の中でも、ビジネスの現場においても考えさせられる名言や考え方が数多く出てくる本著の中で、ヤマシタが感銘を受けたシーンをいくつかご紹介します。
企業は人そのものである
企業は「人」そのものなのだ。優秀な人を惹きつけることができなければ、企業は絶対に経営者の能力以上には成長をしない。
経営者の能力は重要ですが、一人で企業は成り立ちません。企業は人の集合体であり、人の能力の掛け合わせで価値を発揮します。チームワークという稚拙な言葉では表せない、優秀な人材同士のシナジーがあって初めて1+1が3にも4にもなっていくのです。
マネジメントなどに携わる多くのビジネスマンは、部下の力量を踏まえて人材配置を行うシーンがあると思います。そんなときに、自分の実力よりも上の人材を毛嫌いしてしまう傾向にある人がいると思います。
しかし、自分がチームで一番上の立場であったとしても、そこは適材適所で、各メンバーが自分よりも価値発揮してもらう方がチームとしての生産性は高まります。
また、自分よりも優秀な人材がチームにいることで、下からの突き上げがあり、様々な気づきやモチベーションの向上が見込め、自らの成長も更に促進していくものです。
とにかくオンデーズはメンバーが素敵な人ばかり。CFOの奥野さんをはじめ、みんなオンデーズが好きで好きで仕方ない、という方々がそろっており、チーム力がとても高く描かれています。
優秀な人材をチームに招き入れる事と、優秀な人材に育て上げていく事で、企業やチームというのはどんどん成長して行く事が、この本の中でも描かれています。ビジネスにおける成長は、そこに集まる人の質であり、その人たちの気持ち次第である、ということがよくわかるエピソードです。
東日本大震災のお婆ちゃんの話
オンデーズがお客様に本当に売らなければいけないのは、安いメガネでもお洒落なメガネでもなく「メガネをかけて見えるようになった素晴らしい世界」だったのだ。
東日本大震災が発生し、大事なメガネを無くしてしまったというお婆ちゃんが出てくるエピソード。家族と離れ離れになり、安否がわからないところに、掲示板に安否情報が集まる。その文字が見えないということで不安に押しつぶされそうになっていたところに、メガネを作りに来たオンデーズのメンバーが。それに対して強く感謝の気持ちを表すというエピソードです。
ここで強い感謝をされた田中社長は、メガネ屋として本当に大切なものに気づきます。経営者として、企業を大きくして利益を出すこと、に執着していた田中社長が、雷に打たれたようと表現し、改めてオンデーズの抱えていた問題であったと気付くシーンです。
企業は利益を追求することは当然ですが、そのビジネスにおいて社会問題を解決したり、誰かの役に立ったり、人を喜ばせる、笑顔にするという活動をしています。その対価としてお金をいただくことはあるけれども、単純にお金をもらうためだけに執着してビジネスをやっていることは果たして善なのか。
誰かの課題解決をする、という意識を忘れず、日々のビジネスに向き合うことで、誰かから感謝され、それがモチベーションに代わり、明日への活力が生まれる。その好循環を生み出すことで、業績も好況していくのではないでしょうか。
「破天荒フェニックス」まとめ:人はストーリーにお金を払う
この記事ではごく一部をご紹介しましたが、何度も窮地に立たされる田中社長の意思決定のプロセスや、心模様が詳細に描かれている作品です。メガネをふだんかけないヤマシタは、オンデーズのことをそこまで知らなかったのですが、こうしたストーリーが背景にあるメガネには興味がやはり湧いてきます。
今は物も溢れ、単純に機能性だけではモノが選べない時代です。そんな中でも、こうしたバックボーンや多くの社員の方々の熱い気持ちが通ったメガネだということを認識すると、やはり魅力的に映るものです。人はモノではなく、ストーリーに対してお金を払うのだと。そして個人的には、MokeyFlipの大ファンなので、コラボモデルが気になるところ。これは要チェックです。
日々のビジネスで壁にぶち当たっている人たちにとっても、田中社長の破天荒ぶりは爽快でもあり、かつ自分の心を正常に戻してくれる行動が数多く表現されています。明日への活力として、日曜日の夜にぜひご一読ください。