「実行力」は「結果を出すための仕組みづくり」のスキル
この本は、多くの人が知っている大阪府知事、大阪市長を歴任し、大阪都構想住民投票を実施した橋下徹さんの著書。大阪府庁1万人、大阪市役所3万8千人の組織を動かしてきたその手腕の根底には「実行力」があると言います。
本書では、僕が大阪府知事、その後に大阪市長として八年間、どのように人や予算や物事を動かし、実行してきたか。その裏側と、僕がそのときに心がけていたこと、学んだことなどをつぶさに述べました。
本著では、その「実行力」にフォーカスを当てて、実際の大阪都構想の際にはどのようなプロセスによってその偉業を為し遂げてきたのか、「具体的に」描かれており、多くのビジネスマン、特に組織に所属するサラリーマンとして働く方々にとって、非常に学びの多い一冊となっています。
結果を求められるシビアな世界で生きている多くのビジネスマンにとっては、いかにして組織を動かし、またその組織の中で適切に評価され出世していくべきか、といった点に関心があると思います。そんな関心に対して一つの答えを示してくれるビジネスマン必読の一冊です。
リーダーにとっては指南書として必読の一冊
部下との人間関係なんか気にするな
リーダーとなり、マネジメントをする立場になって、部下との人間関係に悩むマネージャーが多くいます。そもそも、有効な人間関係を構築することというのはとても難しいものです。最初からそういうものとして取り組んでいくことで、気が楽になることと、人間関係を根底に置くのではなく、「仕事を根底に置く」ことを重視することが大切だと橋本さんはいいます。普段から飲み食いをよくする間柄だからといって、仕事ができるかどうかは別物。関係性だけを切り取って、仕事の良しあしに目をつむって人間関係を構築してしまうと、結局その部下は成果を出せず、自分の組織としての成果にもつながらない、という考え方です。仕事をやり遂げた間柄でなければ、真の信頼関係など構築することはできないのです。リーダーたるもの、馴れ合いで仕事をしてはいけません。
リーダーは、「小さな問題点」には目をつぶり「大きな問題点」を見つける
最初にリーダーのポストに就いたとき、考えるべきことは、「現場の仕事」と「リーダーの仕事」の仕分けです。僕は、現場に任せてやってもらう仕事の領域と、僕が主導権をもってやる仕事の領域の仕分けにこだわりました。
リーダーやマネージャーになる人たちは、プレイヤーとしてしっかりと成果を残してこられた優秀な方がほとんどだと思います。こうした方々が最も陥りやすい仕事上の失敗は、リーダーとしての役割ではなく、現場の仕事をしてしまうこと、にあります。
よく「名選手、名監督にあらず」という言葉がありますが、多くの組織の場合、、プレイヤーからマネージャーの過程の間に、「プレイングマネージャー」という立場が置かれることがあります。このプレイングマネージャーから本質的なマネージャーに昇格して行けるかどうかは、「チームとして」の成果をしっかりとのこせるかという点と、リーダーとして組織の仕組み作りができるかという点が評価されます。
現場の仕事を一人でこなし、300%の業績を個人で叩き出したとしても、それはあくまでもプレイヤーとしての評価であり、マネージャーとしての評価ではありません。リーダーは現場の仕事をすることが仕事ではないからです。
リーダーの仕事は「決断すること」そのための情報共有を
左記のとおり、現場の仕事をするのではなく、リーダーとしての役割の重要なものの一つが「意思決定」にあります。部下から聞いた情報を基に、様々な意思決定をしていくことがリーダーには求められます。
ここでは、自らの意思決定の判断軸を部下に示していくことが求められます。
自分はどういう価値観・判断基準で意思決定をしているのか
これを部下が認識しながら判断を仰ぐことで意思決定スピードと質が大幅に向上します。
リーダーの仕事は「部下ができないことを実行すること」
ここでいう、部下ができないこと、というのは小さなことではなく、本当に度肝を抜くような衝撃を与える出来事であることが望ましいです。
橋下さんは、大阪城庭園での「モトクロス大会」を実行することで、多くの職員からの信頼を得ることができました。
それに加えて、職員たちの意識も変わることとなり「こういうこともしていいんだ」という風土が芽生えるようになりました。
リーダーとは、部下の力ではできない衝撃を与えることで、成功事例を見せ、風土・文化醸成から組織の意識改革を行うことで組織の仕組みを変えていく事が仕事なのです。
ビジョンがあっても「実行プラン」がなければ、何も動かない
リーダーの仕事として、ビジョンを作ること、という重要な仕事がありますが、ビジョンを掲げるだけで組織が動くことはありません。そこには具体的にどうやってビジョンを実現していくのかという「実行プラン」が必要になります。そのため、ビジョンの策定と組織作りはセットで考える必要があります。
勤め人にとっては組織としての動き方を見据える上で重要な学びのある一冊
トップは「比較優位」で考えている
- 上司に提案がなかなか通らない
- 自分の提案を理解してくれない
このように感じるケースは優秀な方ほど感じているのではないでしょうか。自分の提案を通すためには、相手に思考回路を知ることが重要です。そこで出てくるのがこの「比較優位の思考」。
新しいことや改革を実行しようとするときに、問題点ばかりを挙げる人がいます。もちろん、どんな案にも問題点はたくさんあるでしょう。
しかし、現状に問題がないかというと、それは違います。現状に大きな問題点があるから、変えていこうとしているわけです。現状と新しいことの両者を比較して「よりましなほうを選ぶ」「よりましなほうの問題点には目をつぶる」という思考が大事です。
こうした思考をもって物事を判断できないと最終的には「ダメ出し人間」になってしまいます。新しい案を3案持ってきて、現状と比較することができないと、3案とも間違いなく存在するデメリットに対してのみ注目が寄ってしまいダメ出しの嵐にあってしまいます。現状維持とどちらが比較して優位なのかを検討することができなくなってしまうのです。
上司に提案を通すうえでも、「比較優位の思考」を持てるよう訓練していきましょう。
ポジションによって見えている風景はまったく違う
営業ならば営業の部分のみに関心があり、経理であれば経理に関心があることは、組織に属しているビジネスマンであればまず間違いなくそうなっていくものです。自然とそうなるものなのですからそこに対して悲観的になる必要はありません。
一方で、「仕事というのは、いかに想像力を働かせられるかが、出来不出来を決めます。」とあるように、一元的な視点だけで物事を進めていても、他部署との連携なども検討する上司の目から見れば、「それはあなたの視点だけでしか考えていないよね?」という風になります。
上司の思考を想像することで、ポジションによって見える景色が違う状況を打破していくこと、これにより、あなたの仕事はますます捗るはずです。
橋下徹の実行力:まとめ
本著「実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた」では、大阪都構想を推し進めていた時の橋下さんの実際の組織の仕組みづくりのやり方が詳細に描かれています。リーダー・マネージャーとして活躍していきたい人はもちろんの事、組織で働く多くのビジネスマンにとって、上司の視点、組織としての在り方などを考える上で、多くの学びがある一冊になっています。組織を動かし、大きなことを成し遂げていくことで、自らの人生の目的を叶えていく、そのために必要な「仕組みづくり」を学ぶための指南書として、オススメの一冊になっています。