カーネギーの『人を動かす』の内容とは?
『人を動かす』に書かれている結論は、
という一点です。
人を動かすために必要なことは、人間の根源的な欲求である、【自己の重要感を重視する】という点を踏まえたコミュニケーションを取ることであるとカーネギーはいいます。その結論を様々な経験や事例を基にした原則として紐解き、解説を加えている構成の本です。
各章で紹介されている「人を動かすための原則」については、多くの記事でも紹介されている通り、目次を読めばおおよその理解ができる内容になっています。
『人を動かす』目次と内容
- 人を動かす三原則
- 1 盗人にも五分の理を認める
- 2 重要感を持たせる
- 3 人の立場に身を置く
- 人に好かれる六原則
- 1 誠実な関心を寄せる
- 2 笑顔を忘れない
- 3 名前を覚える
- 4 聞き手にまわる
- 5 関心のありかを見抜く
- 6 心からほめる
- 人を説得する十二原則
- 1 議論を避ける
- 2 誤りを指摘しない
- 3 誤りを認める
- 4 穏やかに話す
- 5 〝イエス〟と答えられる問題を選ぶ
- 6 しゃべらせる
- 7 思いつかせる
- 8 人の身になる
- 9 同情を寄せる
- 10 美しい心情に呼びかける
- 11 演出を考える
- 12 対抗意識を刺激する
- 人を変える九原則
- 1 まずほめる
- 2 遠まわしに注意を与える
- 3 自分の過ちを話す
- 4 命令をしない
- 5 顔をつぶさない
- 6 わずかなことでもほめる
- 7 期待をかける
- 8 激励する
- 9 喜んで協力させる
しかし、『人を動かす』の本質は、その中身よりも、カーネギーの本著のまとめ方にあると言っても過言ではありません。
カーネギーの『人を動かす』はとても分かりやすい本
本著が名著であると言われる理由の一つに、「分かりやすさ」という点が上げられます。
ほぼすべての原則は以下の流れで解説がされています。
-
- 原則の概念を説明する
- リンカーンなどの偉人のエピソードを紹介する
- 日常の具体的事例(子どものトラブルやセールスマンの事例)になぞらえて原則を説明
- 原則の内容をまとめる
また、説明において引用される言葉も、フロイトやアドラーといった著名な学者のものを引用してあり、幅広い知見を学び取ることができます。ガリレオやソクラテスの言葉の引用などもあり、書かれていることが一朝一夕で導き出されたものではない、広く普遍的な内容であることが伝わってきます。
- 構成がシンプルでわかりやすいこと
- 歴史に学ぶことができること
- 身近な事例に落とし込まれていること
『人を動かす』にはこうした構成で書かれており、誰が読んでもわかりやすくまとめられている点が秀逸なのです。内容もさることながら、長きにわたり名著であると認識されている理由でもあります。
とっつきにくいと感じていた人にとっても、臆することなく読み進めていける点はオススメできる大きな理由の一つです。
『人を動かす』をおススメする人
まさにタイトル通り「人を動かす」立場にある人に手に取って頂くべき一冊です、加えて、対人関係が必要になる職業、相手に能動的に動いてもらうことで一定の利益を獲得することができる方には、学びの多い本であるといえます。
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- マネージャーなどの管理職
- リーダーや人をまとめる立場にある人
- チームスポーツの監督やキャプテン
- 物事を教える立場にある人
- 対人関係によって成り立つ職業:営業、調整役など
『自己啓発書』は役に立たない?
「自己啓発」というジャンルに対して一定のアレルギーを持つ人も多いことでしょう。それは、「自己啓発書は実社会で役に立たない」とか「読んでも何も変わらない」といった実感のある人に多く聞かれる感想です。
こうした人たちの多くは、【自己啓発書に”答え”を求めている人】であるといえます。自己啓発書は、読んで字のごとく、「自分の考えをより深めていく」ためにある本だとヤマシタは考えます。読んだからと言って実社会は何も変わらず、あなた自身もその瞬間から何かの力を手に入れられるわけではありません。
『人を動かす』も、読んで反論するような内容は少ないと思いますし、すでに実践されているような方も多くいます。ただ、そこから改めて自分の考え方を見直し、「これで正しいんだ」ということを、長い歴史で名著と呼ばれている内容が後押しをしてくれる点が、まさしく自己啓発なのではないでしょうか。
名著、古典と言われる本は食指が伸びにくいものです。この記事の内容を踏まえ、目次だけでも目を通してくれる人が増えることを願っています。
『人を動かす』要約・ポイントまとめ
徹底的に相手の気持ちになって考えることが重要
人を動かす3原則は以下の3つ。
- 批評も非難もしない。苦情も言わない。
- 率直で、誠実な評価を与える。
- 強い欲求を起こさせる。
相手の気持ちを理解することに努め、相手の「自己の重要感」の欲求を満たせるように配慮し、本人から行動を起こしたくなるように仕向ける。これらが達成できれば、どんな人も自分が思ったような反応を見せてくれる、というのがカーネギーの一貫した主張です。
人は自分の欲求を満たすために、相手のことをないがしろにしてしまうことが多々あります。でも本当は、小さな時から我々は「相手の気持ちになって考えよう」ということは教えられているのです。
日々を過ごしていく中で、立ち止まって目の前の相手のことを思いやる気持ちを忘れてしまうことがあります。
しかしそうした配慮内コミュニケーションを取ることでは、相手は自分が期待することとは反対の反応を示し、結局のところ自分の欲求を満たすことができないのです。
テクニックではなく心を変えることが大切
相手の気持ちになって考えることが重要だということは、誰しも否定的な考え方になる人はこの日本においては少ないことでしょう。そして本著の中ではその主張を補完する原則が数多く紹介されています。
しかし、それらはテクニックやメソッドといった類のものではありません。そもそも心の底から相手に配慮することができなければ、自分を不幸にしてしまいます。自分の本音を押し殺して生きることになるからです。
『人を動かす』を読んで共感できるポイントがあった場合には、まず相手が何を思うか、腹が立ちそうなときには、どういう形で着地すると相手も嬉しいのだろうか、ということを、きちんと立ち止まって考える事が大切。
これは意識的に行ってこなければ自然と身につくものではないのと、性格的な要素も大きくかかわります。利他的であれとまでは言いませんが、自分の欲求を満たしたいのであれば、本心から相手の気持ちを考えるkとが一番の近道であるということを心から思うことが重要です。
人間関係を良好にすることは人生に輝きをもたらすことである(と理解する)
本ブログの読者は広くビジネスマンがメインであり、実際の仕事の現場における「人の動かし方」には強い関心がある人が多くいると思います。そのため、現場でのコミュニケーションの取り方や事例に興味があり本著に関心を持たれている人もいると思いますが、指揮系統などがはっきりしている組織においては、上司の言うことは命令として遂行させることはそれほど難しいことではないでしょう。
しかし、中長期的な視点でそれが健全かどうかは別問題です。相手と衝突しながらも、自らの権力で相手をねじ伏せながら生きることと、相手と融和しながら、主体的に行動を起こしてくれることであれば、後者の方がより魅力的な仕事の運び方であることは言うまでもありません。
相手を打ち負かすことで自らの欲求を押し通すことも短期的な視点で言えば、一瞬は満たされると思いますが、相手に好意的になってもらうことの方が、よほど愉快な生き方であり仕事の運び方です。
人生そのものをより豊かなものに変えてくれるための「心の持ち方」を教えてくれるのが本著「人を動かす」なのです。
『人を動かす』まとめ:なぜ名著と呼ばれるのか
内容について、多くの読者は「ふーんそうなんだ。」「やっぱりこういうことだよね。」といった感想をいただく内容が多く掲載されています。
この本を読んで「人生が変わりました!」という感想は多くはないことでしょう。
それが、良著か否かを判断する軸でないことは、皆さんもよく知るところです。
『人を動かす』は古典です。初版は1936年という長きにわたり評価をされてきた本です。そして、多くの読者が構成にも語り継ぐべき本であると認めている以上、人間の本質を一定書き表していると言わざるを得ません。
重要なことは、本著を読み、「実践」すること。既に多くのビジネスシーンで語り継がれている内容となっており、いずれかによっては時代錯誤のものもないとは言えません。
あとがきにもある通り、『人を動かす』の成り立ちは、カーネギー自信が多くの講習会を経て、少しずつメソッドを加えていったものになります。そのため、ここに書かれている内容は、実践済みの原則であり、机上の空論に寄らないという点が、長きにわたり愛されてきた理由の一つではないでしょうか。
カーネギー「人を動かす」という本そのものの存在は多くの人が知っていることと思います。ただ、これまで食指が伸びずどうしても読む機会に恵まれなかった人も多くいる一冊だとも思います。本記事を踏まえて、読みやすさ、分りやすさの観点から、そこまで毛嫌いするほどの一冊ではありません。ビジネスマンの最低限の教養として、是非一度目を通しておくことをオススメします。