錯覚資産とは何かをわかりやすく学べる本
結局、これは、どういう本なのか?
第一に、これは、「実力主義」の欺瞞を暴く本だ。
インターネットが台頭することによって、年功序列は崩壊し、より平等にチャンスが与えられるようになった現代社会において、「実力主義」というキーワードは皆さんもなじみのある言葉だと思います。
そして、その言葉に少なからず共感を覚えていることだと思います。
しかし本著では、そういった実力主義と銘打っているこの社会は果たして正しいのか、本当に実力主義に基づいた正当な評価がなされているのかを問うています。
第二に「本著は、成功法の本だ。~「世の中、実力主義になんてなっていない」という身も蓋もない現実を踏まえたうえでの、リアルな成功法だ。
「思考の錯覚」と呼ばれるものを用いて、実社会における成功法を紹介してくれます。実力主義ではないという世の中を踏まえたうえで、具体的なアクションを教えてくれる本です。
錯覚資産を使いこなす著者:ふろむだ氏
著者は、ふろむださん。
のべ数百万人に読まれたブログ「分裂勘違いくん劇場」の著者
多様な業務経験を生かして、主に仕事論などでの記事で人気を博す。
プロフィールを読むと「ここは極論を楽しむ劇場です。プロフィールページをよく読んで、真に受けたり鵜呑みしたりしないように気をつけてご鑑賞ください。」
素敵です。ブログで主張をする際には、やっぱり極論というのは読んでいて面白い。一度ふろむださんのブログにも目を通したうえで、気に入った方には本著はすんなりと読んでいただけることでしょう。
「勘違いさせる力」読むべき人はこんな人
- 認知バイアスについて初めて読む人
「認知バイアス」という言葉については、ご存知の方も多いことと思います。ヤマシタも言葉尻自体は知っていましたが、具体的にどういったものか、どう活用すべきものなのか、といった点において、本著ではビギナーでもわかりやすくまとめてくれており、すんなり理解できる構成になっています。 - 世の中実力主義だ!と思っている人
自分の実力でのし上がるんだ!と息巻いている方にとっては、時には反論したくなるような主張もなされている本であり、不愉快に思われる点もあるでしょう。
しかし、その野心をより高い確率で成功へ導くためには必要な知識やノウハウが語られています。あなたのその実力、と呼ばれるものをより高い確率で発揮する上で読み解いて損はない内容になっていることでしょう。
勘違いさせる力とは「錯覚させる力」
世の中には、思考の錯覚に満ち溢れている。
- 売り上げを半期で73%増やしました
- 株式会社凸凹商事の営業部長をやっていました
- 月間300万PVのブロガーです
これらの実績が、たとえ実力によるものではなく、”たまたま運よく”達成したものであったとしても、「実力がある人だ」という錯覚を生み出します。
だって、「そんなことができるなんて実力がある人だ!」って普通に考えれば思ってしまいますからね。
これを本著の中では「錯覚資産」と呼んでいます。
成功スパイラルという表記もされていますが、こうした錯覚資産をうまく活用することで、さらに成功を手繰り寄せることも可能です。
むしろ、本当に実力がある人よりも、錯覚力タイプ:実力はないが、実力があるように見せかける能力のある人、の方が、いずれ本当に実力がある人を追い抜いてしまうこともあるのです。
これは、実力があると周囲が錯覚することで、良い上司、良い部下、良い同僚に恵まれ、資産も潤沢にプロジェクトを遂行することができ、必然的に成功に近づくことができる、という仕組みのためです。
勘違いさせる力、とは詐欺のようなものではなく、実際に詐欺にあわないためのスキルでもあります。
本当にこの人は実力があるのだろうか、と一歩止まって考える。そうすることで、人生を悪いスパイラルから遠ざけることができるのです。
実社会で錯覚させる力(錯覚資産)を悪用する
営業活動
ヤマシタは普段は営業マンです。その中では、肩書きなどをうまく活用することが多い。
「〇〇株式会社の西日本支社で営業マネージャーをしております」
こういった自己紹介をすると、まずは、そのレイヤーでの会話をスタートさせられる。
「こいつは部下も持っていて営業力に長けた人間なんだな」とか「決裁権がありそうだから交渉にもスピード感が出そうだな」といった印象を持って盛ることができます。
実際、個人的には営業力は中の下ぐらいだと認識していますが、概ね営業成績は上から数えた方が早いです。これこそ錯覚資産の一つ、肩書きというモノです。
社内営業
先ほど合った通り、営業マンとしての成績は、会社にもよりますが、業績面で大きく左右されると思います。営業スキルの話はするつもりはありませんが、肩書きもうまく活用し、成績がうまく出てきた、というタイミングで発言をする、これこそ志向の錯覚を利用した社内営業の一つだと考えています。
ビジネスにおける正解がないことは皆さん周知の事実だと思いますが、その可能性を高めたいという思いは同じ。それであれば、成功している人が試している手法は正しいのではないだろうか、こういった仮説がまかり通るシーンは多々あると思います。
社内会議にて、「営業成績が伸びない、どうしたらよいものか」といった議題が出ることは、日常茶飯事のことだと思います。ここで、錯覚資産である「ヤマシタはどうして営業成績がいいのだろうか」といった問いに対して、自らのノウハウをこれでもかと披露するのです。
例えば、どういった顧客にアプローチをしているのか、アプローチの仕方はテレアポ?手紙?飛び込み?紹介?、どういった訴求の仕方をしているのか、など具体的な手法かつ、再現性のある手法が好まれます。
この、「再現性のある手法」というのがミソであり、その手法を活用することで、結果が出たときには「ヤマシタのノウハウが効いたのだ」という錯覚をアが得ることができます。実際には運よく受注が重なっただけかもしれないのにもかかわらず。
こうして、錯覚資産により、社内評価も上がり、昇進にもつながっていくのです。
本著では、「運ゲーで運を運用して勝つ方法」というくだりで語られるところであり、「確変」が入るまでは、小さく賭けること、とあります。小さなチャレンジを積み重ねていき、”運よく”成功したときに、大きく賭けるのです。これが、社内会議での発言。今は自分は営業成績もよく、成功している。錯覚資産がある、と認識できるときに、全力で投資をするのです。
そしてよりよい環境を手に入れることで成功のスパイラルを生み出すことができます。よりよい地位、影響力、資産といったものを用いてまた小さな賭けを積み重ねていく。確変が入ったら、大きく投資する。この運用で成功スパイラルに入っていくのです。
錯覚させる力は現代社会で生き抜くための必須スキルだ
実力がないとキツイ
前提として、ビジネスシーンにおいて、実力(何か成果を残す)といったことが重要でない、なんてことはない。実際に評価する人間がいて、その評価には数字などのある一定の成果を求められるためです。
しかし、その成果も同じ成果を出した人でも評価が変わることは皆さんも感覚的に認識していることでしょう。
これが、錯覚させる力を持つ人と持たない人の差になり、それが未来的には乗り越えられないほどの差としてのしかかってきます。
実力だけでもキツイ
先に書いた通り、実力は重要ですが、実力を「認めてもらう」ということがより重要です。冒頭に書いた通り、この世の中は実力主義ではありません。実力を「認めてもらってナンボ」という世界なのです。
錯覚させる力、錯覚資産というモノを、実力にかけあわせることで初めて成功が得られる、そんなことを本著では示唆してくれています。
日々ビジネスシーンで奮闘しているサラリーマンにとっては、これほど有意義な著書はないと思いました。個人的にも、考え方から行動に至るまで、錯覚資産という考え方を踏まえた活動をしようと考えたほどです。
サラリーマンとして活躍したい人、伸び悩んでいる人にとっては、是非手に取っていただき、錯覚資産、認知バイアスの罠にハマらないことをオススメします。