【要約まとめ】『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門(森岡毅)』感想。マーケティングの本質を学べる一冊
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USJ再編の立役者「森岡毅」によるマーケティングの入門書

マーケティングの成功事例を国内でピックアップしろといわれれば、ほとんどのビジネスマンがUSJのV字回復エピソードを上げるでしょう。本著は、その立役者である森岡毅さんが書かれた、マーケティングの入門書。あくまでも入門書なので、これを読めばマーケティングをマスターできるものではありませんが、マーケティングを学ぶ本としてはこれ1冊でかなりの領域を網羅的に学ぶことができます。

実際のUSJにおける様々な施策に対して、なぜそれを行ってきたのか、どういった戦略・背景があり実施に至ったのか、といったことが克明に書かれており、難しい単語も分かり易く説明してあるため、どんな方が読んでも大変読みやすい本に仕上がっています。

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方著者:森岡毅

森岡 毅(もりおか つよし、1972年(昭和47年)10月12日 - )は、日本を代表するマーケター、戦略家。

ビジネス書のベストセラー作家としての顔も持つ。元株式会社ユー・エス・ジェイ チーフマーケティングオフィサー 執行役員。兵庫県伊丹市出身。

高等数学を用いた独自の確率統計ノウハウによる戦略理論と多くの奇抜なアイデアで、経営難に陥っていたテーマパーク・ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを劇的にV字回復させた人物として知られる。

『ユニバーサル・スタジオ・ジャパン再建を成し遂げ、使命を果たした』として2017年1月末に株式会社ユー・エス・ジェイ を退社。同年、有志と共に世界初のマーケティングノウハウのライセンシングカンパニーである株式会社「刀」を設立、代表取締役CEOに就任。

引用:Wikipedia

日本のマーケターと呼ばれる職種の中でのトップランナー。P&Gでのマーケティング経験を踏まえ、USJにCMO(チーフマーケティングオフィサー)として執行役員を歴任。そこでの実績はもはやだれもが認める見事なものでした。

数々の著書も出されており、それぞれベストセラーになるほどの作家としての顔も持ち、多くの日本のビジネスマンに対して強く影響を及ぼしている一人です。

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方:目次

  • プロローグ USJがTDLを超えた日
  • 第1章 USJの成功の秘密はマーケティングにあり
  • 第2章 日本のほとんどの企業はマーケティングができていない
  • 第3章 マーケティングの本質とは何か?
  • 第4章 「戦略」を学ぼう
  • 第5章 マーケティング・フレームワークを学ぼう
  • 第6章 マーケティングが日本を救う!
  • 第7章 私はどうやってマーケターになったのか?
  • 第8章 マーケターに向いている人、いない人
  • 第9章 キャリアはどうやって作るのか?
  • エピローグ 未来のマーケターの皆さんへ
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「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」から学べること

この本から学べること
  • マーケティングとは何か?という根源的な疑問の解消
  • すべてのビジネスマンが成功確率をあげるための方法論
  • ビジネスキャリアにおける成功法則の一端
  • 「戦略」とは何かを本質的に解説

などなど、実際にマーケターとして活躍している人ではなく、我々のような一般的なビジネスマン全員が興味の対象になるようなことが多く書かれています。

本著の成り立ちとしても、森岡さんが「マーケティングを知らない人に向けて書かれた、マーケティングの根本を理解してもらうためのわかりやすい本がない」というように、多くの専門的な著書ではなく、本当の意味での「入門書」として、多くのビジネスマンにオススメできる一冊となっています。

マーケティングとは何か?

マーケティングってね、売るというよりも、売れるようにする仕事だよ

「商品を売る」のは営業の仕事、「商品を売れるようにする」のがマーケティングの仕事。

自社商品が顧客に「選ばれる必然(選ばれて当たり前の理由)」を作れているということ

マーケティングとは、漠然とCMを打ったり、プロモーションを行うことなどという理解が蔓延していると思われますが、実際には、商品を売れるようにする仕事であると森岡さんは言います。

更に、マーケティングの本質としては、

マーケティングの本質とは「売れる仕組みを作ること」です。どうやって売れるようにするのかと言うと、消費者と商品の接点を制する(コントロールする)ことで売れるようにするのです。

コントロールすべき消費者との接点は主に3つあります。

(1)消費者の頭の中を制する。

(2)店頭(買う場所)を制する。

(3)商品の仕様体験を制する。

そして、この3つの中で森岡さんは、敢えて最も大切なものを選ぶとすると、「消費者の頭の中」だといいます。

何かを買おうと思ったときに、そのブランドなどが認識されているかどうかを覚えていてもらわなければなりません。そうしなければ売り場に足を運んでもらうことすら叶わないのですから。

マーケティングとは治水工事のようなもの

マーケティングとは「売れる仕組みを作ること」です。消費者が購入を決定していくた際にある、以下のようなビジネス・ドライバーの流れをコントロールすることがマーケターの役割です。

  • Awareness(%):認知率
  • Distribution(%):店頭での配荷率
  • Display(%):店頭での山積率
  • Trial(%):購入率
  • Repeat(%):再購入率
  • Pricing:平均価格
  • Purchase Frequency:購入頻度

これらのビジネス・ドライバーに数値を当てはめることで、ブランドの売上を計算することができます。いきなり計算とか言われてドン引きしないでください。小学生でもわかる四則演算だけ使い、ここでは話を簡単にするためにざっくりと解説します。

 まず、市場に存在する消費者の人数に、認知率、配荷率、購入率を掛け合わせると、何個売れるのか計算することができます。

 

「売上個数」=「消費者の数」×「認知率」×「配荷率」×「購入率」

(1人が1個だけ買う場合。複数購入の場合は平均購入個数を掛け合わせる)

 

 次に、それに平均客単価を掛ければ売上金額になります(ここでは割愛しますが、更にリピート率や購入頻度を使って一定期間内の売上金額を計算することもできます)

 

「売上金額」=「売上個数」×「平均価格」=

「消費者の数」×「認知率」×「配荷率」×「購入率」×「平均価格」

 

 マーケターは目指している売上個数や売上金額を達成するために、このようなモデルを用います。逆に上手(うま)く行くためには「認知率を何%いかなくてはいけないか?」とか「購入率をあとどれだけ上げなくてはいけないか?」などと思案しています。目的から逆算して、成功するための必要条件を理解しようとするのです。

 

 具体例で示しましょう。USJであるブランドのイベントを企画したときです。そのブランドは全国に活発なファンが500万人いることが調査でわかっていました。また、認知形成に使えるマーケティング予算から想定すると、認知率は50%はいけるであろうと考えていました。次に配荷率ですが、日本全国におけるUSJの配荷率(買おうと思えば買いにいける割合)はさまざまな見方があり得ます。関西に1拠点しかないUSJでのイベントですので、交通費や宿泊費など大きな費用がかからなくても来場できる範囲と考えて関西の人口比率(つまり20%)を配荷率としました。やってみるまでははっきりわからなかったのは購入率です。大型テーマパークでやるそのようなイベントは初めてのことでしたので、自社にも競合にも参考になるデータはありませんでした。その時、私はコストを回収するのに必要な購入率は最低でも6%、もし10%までいければ大成功というように、数値を当てはめて検証していました。

 このようなシミュレーションで成功のための必要条件が明確になれば、その後やるべきことも明確になります。この場合は、実際にファンの間での認知率50%を達成するプランを作ることと、認知した人の10%が購入したくなるような魅力のあるイベント内容を制作すること、そしてその魅力的な内容を認知プランの中心に据えて訴求していくことです。そして、実際には10%以上の購入率を達成する大成功をおさめることができました。

 ちなみにこの計算式は、テーマパークに限らず、多くの業種に置き換えて適用できます。皆さんの関係しているビジネスでもシミュレーションしてみて、どこがポイントかを確認することをオススメします。

具体的な事例が紹介されていますが、多くのビジネスの現場においても、似たようなビジネス・ドライバーは存在します。BtoCだったりBtoBだったりで多少変化はあると思いますが、こうしたビジネス・ドライバーを調整し、ビジネスの流れを円滑化させることは、マーケターでなくとも、重要なスキルであることが認識できるはずです。

戦略とは何か?なぜ戦略が必要なのか?

戦略の定義:戦略とは、目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」のこと。

もうちょっとぶっちゃけたも文章で同じことを書いてみましょう。「戦略とは、何か達成したい目的を叶えるために、自分の持っている様々な資源を、何に集中するのかを選ぶこと」

そもそもなぜ戦略が必要なのか。

1.達成すべき目的があるから。

2.資源は常に不足しているから。

達成すべき目的がなければ戦略を立てる必要もありませんし、使える経営資源が無限に存在すれば、戦略を立てる必要もありません。

しかし、ビジネスの現場では必ず目的が存在し、必ず経営資源は不足しています。そうでないことがまれにあるとすれば、それはチャレンジをしていないこととほぼ同義ということになります。企業は成長を続けていくものであるという前提に立てば、そんなことはあり得ません。よって、戦略が必要になってくるのです。

「カレーすき焼き」を作ってはいけない

本著の中で個人的に最も共感を得たものがこの一節。

ある人はカレーライスが良いと言う。別の人はすき焼きが良いと言う。そんなときに多くの会社では、誰かが頑張らないと「カレーすき焼き」を作って消費者に提供してしまうことになりますもしあなたがマーケターであれば、自分が何を食べたいかは一切関係なく、消費者が何を食べたがっているかのみを深く洞察しなくてはいけません。消費者がカレーライスを食べたがっているとわかった時に、あなたが取るべき行動は、社内をカレーライス一本でまとめることです。決して「カレーすき焼き」を作らせてはいけません。

多くのビジネス現場でよく出てくるシーンと似ているこのカレーすき焼き。本質的にターゲットユーザーが求めているものを解き明かせないと、どうしてもいいとこどりの戦略にならざるを得ません。
そのいいとこどりが最適解なのであれば問題ないのですが、往々にしてそのような戦略をとる場合、最適な結末を得ることは少ないでしょう。

会社というものは、様々な個人の集まりで成り立っており、当然それぞれの部門間においてKPIも変わればKGIも変わってきます。そんなときにマーケターとしては「消費者理解の専門家」として、社内をまとめ上げる必要があるのです。

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方:まとめ

本著の中では、マーケティングとは何か?マーケターとは?戦略とは?といった、ビジネスマンにとって多くの疑問を解消してくれるような章が数多く登場し、実際のケースに当てはめた形でそれを紹介してくれています。これらのノウハウは、たとえあなたがマーケターという職種を目指す人でなかったとしても、ビジネスマンとしてキャリアアップや出世をする上で必要な「戦略的思考」を学ぶことにつながります。論理的思考がベースにあり、その中で戦略的思考を学び、マーケティング思考をマスターしていくという構成になっているため、どんなビジネスにおいてもおおよそ応用の利くものばかりです。相手が個人消費者でなくても、あなたが対峙する上司やステークホルダーに対して、マーケティングを使うことでより物事は円滑にスムーズに進むことでしょう。
ビジネスマンがなんとなく日々を過ごすことをやめるうえで必要な思考を思い起こさせてくれる、そんなオススメの一冊となっています。

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