- 「不格好経営」とは
- 著者:DeNA会長 南場智子さん
- 「不格好経営」起業家はみな同じく修羅場を潜り抜けている
- 印象に残ったフレーズ5選
- 3番目を付け加えるとすれば、命をとられるわけじゃないんだから、ということだろうか。たかがビジネス。おおらかにやってやれ、と。
- 「システム詐欺」という言葉をやめろ。社長が最大の責任者、加害者だ。なのにあたかも被害者のような言い方をしていたら誰もついてこないぞ。
- 狙ってもなかなか達成できないような難しいことが、狙わずにできるはずがない、大きいい試合を使用、と幹部連中に本気でコミットを迫ったのを覚えている。
- 人は、人によって育てられるのではなく、仕事で育つ。しかも成功体験でジャンプする。それも簡単な成功ではなく、失敗を重ね、のたうちまわって七転八倒したあげくの成功なら大きなジャンプとなる。
- ビジネススクールの2年間で一度だけ、はっとするような学びの瞬間があったあるケースを題材にどうするこうすると皆で議論をしているときに、「ケースに書かれているうすっぺらな情報だけじゃ判断できないよ。あれもこれも調べなきゃ」と言った私に、「それでも今決めなきゃいけないときってあるでしょ」とクラスメートに一蹴されたときだ。
- 「不格好経営」:まとめ
「不格好経営」とは
インターネット企業の雄、DeNA(ディ・エヌ・エー)。横浜DeNAベイスターズで著名なことに加え、モバゲーなどのソーシャルゲーム事業、最近ではAI事業を絡めた新サービスなども展開しています。
そんなDeNAを立ち上げた南場智子さん。現在は、代表取締役会長として、さらなる拡大に力を入れています。
そんな南場さんが1999年、DeNAという会社を立ち上げるエピソードが快活な文章で語られる本著では、起業することの大変さや、経営という難しく不安定なものの本質が読み解けます。
起業家や、ベンチャー企業経営者など、ベンチャーマインド溢れる方々にとっては、先人の知恵を借りることができる本となっており、学びの多い一冊です。
著者:DeNA会長 南場智子さん
1986年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。
1990年、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得し、1996年、マッキンゼーでパートナー(役員)に就任。
1999年に同社を退社して株式会社ディー・エヌ・エーを設立、代表取締役社長に就任。
2011年に代表取締役社長を退任。取締役を経て、2015年6月、取締役会長に就任。
2017年3月、代表取締役会長に就任
マッキンゼーといえば、世界に名をとどろかせる、超大手コンサルティングファーム。そこからハーバードへ留学しMBAを取得。マッキンゼー日本支社長にまで上り詰めるという輝かしい功績を残します。
しかし南場智子さんは、マッキンゼーを退職し起業するというキャリアを選びます。年収も一流で成功路線の真っただ中にいたであろう南場さんが、なぜこうしたキャリアを積み上げることになったのか。
「そんなに熱っぽく語るなら、自分でやったらどうだ」
たった一言が私の人生を変えてしまった。
言うは易く行うは難しとはよく言うが、それをその身で痛感することになるストーリーが克明に描かれています。
一流企業のコンサルティングを経て、MBAまで取得されている南場さんが、いかにしてDeNAを起業してきたか、その中の奮闘記が克明に描かれており、読み物としてとても読みやすく、情景が目に浮かぶような読みやすい内容に仕上がっています。
「不格好経営」起業家はみな同じく修羅場を潜り抜けている
学生で起業を志す人の中にも、天下のIT社長を目指す人も多いと思いますが、起業とはとてつもない修羅場を何度も潜り抜ける必要があることをこの本は教えてくれます。
本ブログの著者ヤマシタは一般のサラリーマンですのでこの感覚を肌身をもって知ることはできませんが、そんなビジネスマンの方々にとっても、この本から得られる知見は多くあると思います。
NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも語られている内容などを見ると、南場さんの前向きさや壮絶なエピソードなど、様々なストーリーが込められており、日々の業務のモチベーションにも変わっていく内容が書かれています。
南場さんのキャラクターが文体などにも如実に現れており、爽快な口ぶりで当時を振り返るストーリーは鮮明にイメージが湧くような内容になっています。
印象に残ったフレーズ5選
3番目を付け加えるとすれば、命をとられるわけじゃないんだから、ということだろうか。たかがビジネス。おおらかにやってやれ、と。
苦しいときほど「前のめり」になる人、と全国で発表された中で、何を意識しているのか、といった文脈の中で語られた一行。
起業家というものは、命を懸けて事業を個なっている人だという印象が強い。当然その事業が立ち行かなくなり首をくくるような人もいる中で、南場さんのコシの強さを感じるセリフです
ヤマシタは新卒の時から激務の広告会社に勤めていましたが、そんな中でも先輩からは「死ぬわけじゃないんだから」と常日頃言い聞かされてきました。(それでブラックだったのだから何ともですが笑)
嫌な仕事に直面したり、大きな決断を迫られるビジネスの苦境に立たされた時などでも、こうした「ゆとり」というものは、その時の判断を洗練させていきます。これほどまでに修羅場を駆け抜けている人がこうした考えを持っていることにシンプルに嬉しくなり、今後も胸の真ん中に置きながら働くべきセリフだと思います。
「システム詐欺」という言葉をやめろ。社長が最大の責任者、加害者だ。なのにあたかも被害者のような言い方をしていたら誰もついてこないぞ。
南場さんの旦那さんが当時、「我が社最大のトラウマ」と南場さんが書き綴っている出来事が起きた際に、南場さんに対していった3つのことのうちの一つ。南場さんは様々なメディアでこの事件のことを話しているため、詳細は語りませんが、ざっくりというとサービスのローンチ直前になって、成果物が、コート一行でさえ完成されていなかった事実が発覚したというもの。フラフラになった南場さんは寝ている旦那さんに対して、「システム詐欺にあった」といったときに帰ってきた言葉です。
社長というものは人を取りまとめ、その責任もすべて請け負いながら皆と一緒に走っていく存在。その人が他責になってしまったら誰もついてきてはくれないということが書かれており、マネジメントに携わるビジネスマンにおいては、心に刺さる一言だと感じます。
会社、チームを率いているものは、そのメンバーの失敗も含めて全責任を負っている、こうしたときにどういった態度対応が取れるかをメンバーは一挙手一頭足に気を配ってみているのだと。
自らに矢印を向ける、ということを企業フェーズの会社においても常日頃持ち続けることの重要性を感じます。
狙ってもなかなか達成できないような難しいことが、狙わずにできるはずがない、大きいい試合を使用、と幹部連中に本気でコミットを迫ったのを覚えている。
5期先の数値目標を打ち立てた際に非常に高い目標を掲げた南場さんが、反発する幹部陣に対して言い放った言葉。
大きすぎる目標に対して、メンバーはモチベーションを失いがちですが、それに対して、狙いをつける、どうしたらよいか考えるといったごく当たり前の思考を、メンバーを奮い立たせるためにもきちんと伝える、その重要性が語られます。
目指すゴールを決め、それに向けてどうしていくかのプランは一緒に考えていく、こうしたチームビルディングにおける才もさすがの一言です。
人は、人によって育てられるのではなく、仕事で育つ。しかも成功体験でジャンプする。それも簡単な成功ではなく、失敗を重ね、のたうちまわって七転八倒したあげくの成功なら大きなジャンプとなる。
人の成長というモノはグラフには表せないが多くは階段のようになるらしい。自覚としてもやはり、苦しんで苦しんで成長している感覚を覚えられない時期というものが必ず来ます。今あまり成長してねえなあとかそういう感覚です。
ですが、何かにチャレンジをしてギリギリ達成できた、といった成功体験をしたときに成長の自覚を覚えることができます。だから、以前の目標通りのものを常に達成しています、ということでは成長曲線は右肩上がりを描くことはなく、現状維持。それではキャリアアップも収入のアップも見込めずビジネスマンとしての成長もありません。
こうしたチャレンジの環境を会社が与えてくれる場合もあれば、自らこうした環境を作り上げていく必要があるケースもあると思います。「精一杯頑張ってギリギリできるかどうか」といったレベルの仕事を任せることが人の成長につながるとDeNAでは徹底されているそうです。
このレベルを判断し、自らのチームビルディングにも生かしながらビジネスを進めていくという力は、マネジメント能力としてはハイレベルなものに入ってくるのではないでしょうか。
またここでは、DeNAの競争力の源泉についても言及されています。
DeNAの競争力の源泉は、とよく訊かれるが、答えは間違いなく「人材の質」だ。人材の質を最高レベルに保つためには、①最高の人材を採用し、②その人材が育ち、実力をつけ、③実力のある人材が埋もれずにステージに乗って輝き、④だから辞めない、という要素を満たすことが必要だ。
ヤマシタはここで③実力のある人材が埋もれずにステージに乗って輝くことへの重要性に共感します。どんなに実力があるビジネスマンであったとしても、その力量を発揮し、周りに認めてもらうことができなければその評価を正当に得ることはできません。
そのステージを会社の環境として用意してもらえるかどうかはその会社によって変わってくると思いますが、少なくとも、アピール、ではなく、ビジネスへのチャレンジによる成功体験を積み重ねることで、人材の質は上がり、結果的にも本人もやめることなくその会社で価値発揮をしてくれるのだと思います。
ビジネススクールの2年間で一度だけ、はっとするような学びの瞬間があったあるケースを題材にどうするこうすると皆で議論をしているときに、「ケースに書かれているうすっぺらな情報だけじゃ判断できないよ。あれもこれも調べなきゃ」と言った私に、「それでも今決めなきゃいけないときってあるでしょ」とクラスメートに一蹴されたときだ。
コンサルタントと事業会社出身の人物の属性の差が描かれていますが、ここで言いたかったのはコンサル出身の人物の良し悪しということではなく、ビジネスの現場においては正解などないということ。結果的にあの時の意思決定が正しかったかどうかは将来評価すべきことで合って、その際の成功確率を高めるために必要な情報収集はあるにせよ、完ぺきな答えなど出すことができないということ。
どっちにしたらいいか全く判断がつかないような状況下でも、意思決定をしてビジネスを前進させていく必要が起業家には求められます。
我々はサラリーマンなので、死活問題になるような意思決定の場面に遭遇することは少ないかもしれません。しかし、先にも述べたような、できれば前向きになれるような意思決定を通じて少し背伸びをしたチャレンジをする、その成功によって自らの成長を実感することができ、市場価値を高めていくということはできるはずです。
ハーバードのMBAを取っている南場さんですら、起業した後の本著でそのようなことを書いてくださっているのですから、普段のビジネスに触れているサラリーマンにとっても学びは大きいセリフであると感じます。
「不格好経営」:まとめ
公私ともに、といった具合で語られる南場さんとDeNAの生い立ちが、多くの失敗談とともに語られており、まさに経営とはスマートではなく、とても不格好なものであることが書かれています。読者である我々からすれば、今となっては面白おかしく書かれているそれぞれのストーリーをすんなりと読むことができますが、実際にその現場に直面したときにこうした意思決定ができるものだろうか、という点は、起業家、経営者として目指すべきポジションにいる人だと感じます。
また、起業家のみならず、我々のような普通のサラリーマンが、ビジネスマンとしてのレベルアップを図りたいときに必要な考え方などが数多く盛り込まれており、仕事が大変だと感じているとき、元気をもらえる本だと感じました。
こうした会社から第一線を走る様々な起業家も現れ、その筆頭が、SHOWROOMの社長、前田 裕二さん。こちらも著書を出されているのでDeNAでの南場さんとのエピソードなどもあり、こちらの著書もオススメです。